『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』は、2023年に公開された日本映画です。目が見えなくなる漫画家と耳の聞こえないヒロインの恋を描いた本作は、山下智久と新木優子の演技力や美しい映像で話題を集めました。
この記事では、作品の魅力と課題を掘り下げながら、ラストシーンの意味を考察していきます。ネタバレを含むので、まだ映画をご覧になっていない方はご注意ください。
- 『SEE HEAR LOVE』作品概要
- 『SEE HEAR LOVE』あらすじ
- キャスト陣の演技
- ストーリーの特徴
- 作品のテーマ
- ラストシーンの考察
『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』について興味のある方は、是非ご覧ください。
『SEE HEAR LOVE』作品概要
- 原作: NASTY CAT(ウェブ漫画『見えなくても聞こえなくても愛してる』)
- 監督: イ・ジェハン(『頭の中の消しゴム』で知られる)
- 主演: 山下智久、新木優子
- 脇役: 高杉真宙、山本舞香、深水元基、加藤雅也、夏木マリ など
豪華キャストと実力派監督の組み合わせに、公開前から期待が高まりました。特に、山下智久と新木優子の組み合わせは新鮮で、どんな化学反応を見せてくれるのか楽しみでしたね。
『SEE HEAR LOVE』あらすじ
- 人気漫画家の泉本真治(山下智久)が突然の失明の危機に直面
- 自殺を図るも、熱烈なファンで耳の聞こえない相田響(新木優子)に助けられる
- 二人は互いの障害を乗り越えながら愛を育む
- 真治の病状悪化や、響の幼なじみ・植村大輔(高杉真宙)の介入など、様々な困難に直面
- 真治が最後の力を振り絞って漫画のラストを描き上げる
- クリスマスの夜、響のピアノ生配信中に真治が意識を失う
- 奇跡的に一命を取り留め、海外での手術を経て視力を回復
ストーリーの展開は、典型的な恋愛ドラマの要素が詰まっていますね。障害を抱える二人の出会いから始まり、周囲の反対や運命のいたずらなど、観客の感情を揺さぶる展開が続きます。
ただ、最後の視力回復は少し唐突に感じられ、物語のテーマとの整合性に疑問を感じる人もいるかもしれません。
キャスト陣の演技
山下智久(泉本真治役)
- 視覚を失っていく過程や絶望感を説得力を持って演じる
- 繊細な表情や体の動きで、内面の変化を巧みに表現
新木優子(相田響役)
- 聾唖者の役柄に真摯に取り組み、説得力のある演技を披露
- 表情や身振りで感情を伝える演技が印象的
脇役陣
- 一部のキャラクターの演技が過剰に不機嫌だったり、ラブコメ調の誇張された演技だったりと、主演二人の演技のトーンとのギャップあり?
山下智久と新木優子の演技は、本作の大きな魅力の一つです。特に、言葉を介さないコミュニケーションの描写は、二人の繊細な演技があってこそ成立していたと感じました。
一方で、脇役陣の演技のトーンが主演二人と合っていない場面があり、物語の没入感を妨げる要因になっていたかもしれません。
ストーリーの特徴
- 障害を超えた愛の描写
視覚障害と聴覚障害を持つ二人の恋愛を描く試みは斬新で印象的
しかし、障害の描写が時に表面的で、現実の困難さを十分に反映していない面もある
- コミュニケーションの本質
言葉を介さないコミュニケーション方法を見つけていく過程が興味深い
一方で、その過程の詳細や困難さが十分に描かれておらず、やや理想化されている印象も受ける
- ドラマチックな展開
突然の失明や奇跡的な回復など、劇的な要素が多く盛り込まれている
現実離れした展開に違和感を覚える視聴者もいるかもしれない
- テーマと展開の整合性
「見ること」「聞くこと」の本質を問いかける深いテーマ性がある
しかし、最終的に視力を回復させる展開には、そのテーマとの矛盾を感じる部分もある
この作品は、障害を持つ二人の愛を通じて、コミュニケーションや理解の本質を探る試みをしています。独特の設定と深いテーマ性は、観客に新しい視点を提供し、考えさせる力を持っています。
一方で、ドラマチックな展開や理想化された描写によって、現実味が薄れている部分も見受けられます。特に、主人公の視力回復という展開は、それまで築き上げてきた「見ること」の意味を問い直すテーマと、どう整合性を取るのかが大きな課題となっています。
結果として、この作品は観客に強い印象を与えつつも、その解釈や評価は分かれる可能性が高いでしょう。
テーマの深さと娯楽性、理想と現実のバランスをどう取るかが、この作品の核心的な問いかけになっているように感じました。
作品のテーマ
- 「本当に見ること、聞くこと、愛すること」の意味を探る
- 視覚や聴覚を失った主人公たちを通じて、日常で見落としがちな大切なものに気づかせる
- ハッピーエンドへのこだわりは、観客に希望を与えたいという製作者の思いの表れ
テーマ設定は野心的で、現代社会に生きる私たちに多くの問いかけをしてくれる作品だと感じました。ただ、繰り返しになりますが、最後の視力回復というプロットが、それまで築き上げてきたテーマを少し薄めてしまった印象も否めません。
ラストシーンの考察
- 真治が奇跡的に視力を取り戻し、響の姿を見ることができるようになる展開
- 一部の視聴者にとっては唐突で強引に感じられる可能性がある
- 象徴的な意味として解釈することも可能
①真治が心の目で見ることの大切さを学んだ証
②本当の意味で「見る」ことができるようになったことの表現 - 困難を乗り越えて幸せを掴むことができるという希望を観客に与える意図
ラストシーンは、作品全体のメッセージを考える上で重要な部分です。視力回復という展開は、確かに唐突に感じられる面もありますが、それを比喩的に解釈することで、作品のテーマにつなげることができるかもしれません。
ただ、もう少し伏線を張るなどして、この展開への準備ができていれば、より多くの観客の共感を得られたのではないでしょうか。
まとめ
『SEE HEAR LOVE』は、主演二人の熱演や美しい映像、そして愛と希望を描く物語性が高く評価される一方で、ストーリー展開や脇役の描写に関しては意見が分かれる作品となっています。
イ・ジェハン監督と山下智久の初タッグ作品として注目を集め、障害を持つ二人の恋愛を通じて「本当に見ること、聞くこと、愛すること」の意味を問いかける意欲作と言えるでしょう。
本作は、その斬新な設定と主演二人の熱演により、多くの観客の心に残る作品になったと思います。ただ、脇役の描写や一部のストーリー展開には改善の余地があったかもしれません。
それでも、「見ること」「聞くこと」「愛すること」の本質を考えさせられる、心に響く瞬間が随所にあり、観る価値のある作品だと感じました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。