パリ五輪女子ボクシングに出場している2名の選手が「トランスジェンダー」と話題になっています。女子66キロ級のイマネ・ケリフ選手と女子57キロ級のリン・ユーチン選手の2名です。
しかし、調査の結果、この2名の選手は「トランスジェンダー」ではなく「アンドロゲン不応症」だと判明しました。
そこで、本記事では「トランスジェンダー」と「アンドロゲン不応症」の違い、それでも残される問題点について解説していきます。
- イマネ・ケリフ選手・リン・ユーチン選手はなぜオリンピックに出場できた?
- 「トランスジェンダー」と「アンドロゲン不応症」の違い
- 「アンドロゲン不応症」選手出場の問題点
パリ五輪女子ボクシングのトランスジェンダー問題に興味のある方は、是非ご覧ください。
イマネ・ケリフ選手・リン・ユーチン選手は
なぜオリンピックに出場できた?
先ずは、両選手のオリンピックに出場までの経緯を確認します。
- 両選手とも2020年東京五輪に出場
- 両選手とも直近2023年3月の世界選手権でメダル獲得寸前に失格
2023年3月の世界選手権で失格となった理由は、性別適合性検査において新たに導入された、ホルモン検査をする「生化学検査」の結果が不合格だったためで、検査によってXY染色体(男性染色体)を持っていることが証明されました。
2023年3月の世界選手権が、国際ボクシング協会(IBA)がイマネ・ケリフ選手・リン・ユーチン選手2選手に対し新しい性別適格性検査の要求した初めての大会となり、その結果に基づき、これまでの大会での合格判断を覆し、失格の判断が下されたようです。
それでは、なぜオリンピックには出場することができたのでしょうか。
- 2023年3月の世界選手管轄組織だった国際ボクシング協会(IBA)が、過去の不可解な判定や汚職問題の追及を受け、2023年6月に国際オリンピック委員会(IOC)から資格停止処分に。
これにより、オリンピック出場に関しては、国際ボクシング協会(IBA)よりもルール面での「寛容性」に重きを置く国際オリンピック協会が、イマネ・ケリフ選手とリン・ユーチン選手のオリンピック出場を認めることになりました。
それが、今回のパリ五輪での議論を生むこととなっています。
ところが、話が単純でないのは2人が「トランスジェンダー」ではなく「アンドロゲン不応症」であること。
「トランスジェンダー」と「アンドロゲン不応症」の違い
- 「トランスジェンダー」とは、生物学的性と性自認が一致していない人
つまり生物学的には男(女)であっても、性自認が女(男)である人を指します。 - 「アンドロゲン不応症」とは、染色体的には男性だが外見が女性である人
ここには性自認は関係せず、実際に今回の2名とも女性として育ってきています。
そうなんです。2名ともこれまで、外見も含め女性として育ってきているんです。いわゆる「トランスジェンダー」ではないんです。
「アンドロゲン不応症」選手出場の問題点
多様性を認める社会でも、性別による区別が行われるスポーツ競技において、性自認とは異なる病気であったとしても、その選手をどう扱うかにおいては今後検討をすすめる必要があることを、今回のパリ五輪はイマネ・ケリフ選手・リン・ユーチン選手を通して示すことになりました。
トップアスリート同士の競争である五輪競技の公平性を考えた場合、センシティブなテーマであったとしても、現状に問題なしとは言えない、というのが一般的見解となるのではないでしょうか?
まとめ
- イマネ・ケリフ選手・リン・ユーチン選手はなぜオリンピックに出場できた?
国際ボクシング協会(IBA)は2023年3月の世界選手権で両選手を失格としたが、過去の不可解な判定や汚職問題の追及を受け、2023年6月に国際オリンピック委員会(IOC)から資格停止処分になり、オリンピック出場の決定をしたのが「寛容性」に重きを置く国際オリンピック協会に移行したため - 「トランスジェンダー」と「アンドロゲン不応症」の違い
性自認が問題となる「トランスジェンダー」に対し、性自認は関係なく、外見は女性だがXY染色体(男性染色体)をもつ人が「アンドロゲン不応症」 - 「アンドロゲン不応症」選手出場の問題点
トップアスリート同士の競争である五輪競技の公平性を考えた場合、センシティブなテーマであったとしても、現状に問題なしとは言えない
最後までお読みいただき、ありがとうございました。